薬と科学

    熱が下がらない? インフルエンザ新薬「ゾフルーザ」メリットとデメリットは?

    2018年、新たなインフルエンザ治療薬として「ゾフルーザ」が著しく処方されています。

    しかしながら、一部の患者さんからは「熱が下がらない」「タミフルの方がよく効いた」という声が盛んにあがっているようです。

    期待の新薬として登場したにもかかわらず、この現状はどういうことなのか?

    薬の専門家である白衣が調べてみました。

    なお、本稿の情報は世界で最も権威のある医学学術誌「New England Journal of Medicine」に掲載されたデータに基づいています。

    Baloxavir Marboxil for Uncomplicated Influenza in Adults and Adolescents. N Engl J Med. 2018 Sep 6;379(10):913-923. 

     

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    本稿の要約【ゾフルーザの特徴】
    ・熱が下るまでの期間は、自然治癒と比較して「1日」短くなる(タミフルとほぼ同じ)
    ・他人に感染させてしまう期間はタミフルよりも1~2日短い
    ・ゾフルーザ投与患者の成人の約1割、小児の2割以上において熱が下がるまでの期間および他人にインフルエンザを感染させる期間が長くなる
    ・錠剤で1回飲むだけ(タミフルは1日2回を5日間続ける)



    1.熱が下るまでの期間は、自然治癒と比較して「1日」短くなる

    インフルエンザの主要症状と言えば高熱です。

    高熱を含むいくつかの主要症状がなくなることを「症状緩和」と言います。

    その症状緩和までの期間が、ゾフルーザを投与された人では53.7時間であった一方、プラセボ群では80.2時間でした(両値とも中央値)。

    従って、大まかに言ってしまえばゾフルーザを飲んだ場合、飲まなかった場合と比較して1日早く熱が下がります。

     

    しかしながら、ゾフルーザとタミフルの症状緩和までの期間はほとんど差がないことも合わせて証明されおり、「ゾフルーザはタミフルよりも熱をすぐに下げる!」といったことは科学的に否定されていることが明らかとなっています。

    テレビなどで過剰に煽った結果、大きな勘違いが広がってしまっているようです。

     

    まとめると、

    普通ならばインフルエンザの高熱に3日間(約80時間)うなされるのが、ゾフルーザにしろタミフルにしろ、どっちでも良いから飲むとうなされる期間が2日間(約48時間)になる」

    ということです。

    ちなみに「症状緩和」と「健康体」は違うので、完全に元気な状態に戻るにはもっと時間はかかります(1週間程度)。

    ご注意ください。

    2.他人に感染させてしまう期間はタミフルよりも1~2日短い

    「ウイルス力価」という専門用語があります。

    細かいことを無視して簡単に説明すると「ウイルスが細胞に感染できる最低のウイルス量」を指します。

    このウイルス力価をもって、ウイルスの検出期間を評価しますが、ゾフルーザのウイルス検出期間は1日、タミフルは2日、プラセボは4日と、ゾフルーザがタミフルよりも良いという結果が明らかになっています。

    他人に感染させてしまう期間が短くなるということなので、職場感染などのリスクがかなり低減することに繋がります。

    大きな視点で捉えればパンデミックの可能性を小さくしている、ということですので、この点はゾフルーザの大きなメリットと言えます(まぁ発熱している当人には一切関係ないメリットですが、、、笑)

    3.ゾフルーザ投与患者の成人の約1割、小児の2割以上において熱が下がるまでの期間・他人にインフルエンザを感染させる期間が長くなる

    「熱が下がらない」と訴える患者さんの原因の一つが、恐らくこの副作用的現象によるものだと思います(他の原因はメディアが過度にゾフルーザを取り上げた事による過剰な期待)。

    本サイトは専門サイトではないので難しいことは省きますが、簡単に言うと「ゾフルーザを投与された患者さんにおいて、一定の割合(9.7%)でインフルエンザウイルスの性質が変わっており、

    その患者さんは症状緩和までの期間とウイルス検出期間が長くなる」ということが報告されています。

    これは予期せぬ出来事であり、薬が1割の確率で症状を悪化させるというのは大問題ですので、今後の研究課題であると考えられます。

     

    ちなみに「ゾフルーザの投与により性質の変わったインフルエンザウイルスは他人に感染させる期間が長い」という特徴から想定されることとして、

    「ゾフルーザが効かない性質のインフルエンザウイルスが蔓延する」という懸念があります。

    これは、ゾフルーザが早々に使えない薬となってしまうことを意味しており、非常に悩まされる事案の一つです。

     

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    4.錠剤で1回飲むだけ(タミフルは1日2回を5日間続ける)

    ゾフルーザの剤形は錠剤で、インフルエンザと診断されたら1度錠剤を飲むだけです。

    一方、タミフルは1日2回を5日間続けなくてはならないため(合計10回)、ゾフルーザに大きな利点があります。

    また、見落としがちですが、「錠剤」という剤形も魅力的だったりします。

    インフルエンザ薬には錠剤型の他に粉末の薬を吸い込む吸入型があり(点滴型は省きます)、高い効果を有しています。

     

    しかし、吸引型には大きなデメリットがあります。

    それは、「薬を正確に摂取出来ているか否か分かりにくい」という点です。

    ある程度健康な人なら良いのですが、小児・老人・呼吸器疾患を抱えている人、にとっては吸入型は非常に相性が悪いです。

    「インフルエンザと診断されたら1回薬を飲めば良い」というメリットは既存のインフルエンザ薬である「イナビル」も同じですがイナビルは吸入型です。

    ですので、「錠剤で1回飲むだけ」というのはゾフルーザの大きなメリットであると考えられます。

    5.結局、熱が下がらないときはどうすりゃいいのさ

    まず、医師に相談してください。

    インフルエンザは小児・高齢者や身体が弱い方でなければ、ぶっちゃけ「放っておいて治る風邪」です。

    その「放っておいて治る風邪」が治らないならば、なにかしら身体に異常が生じています(インフルエンザ以外の疾患との合併症状の発生など)。

    ですので、早急に医師の診断を受けてください。

     

    もし「特殊な事情があってどうしてもインフルエンザの症状緩和をしなくてはならない」というときは、漢方薬である「麻黄湯(まおうとう)」が有効というデータ(下記論文)があります。

    報告されている「麻黄湯」の効果は、タミフルよりも症状期間を短くしたというものです。

    ただ、サンプル数が少なくデータがタフなものではないので、自己判断でおこなってください。

    A randomized, controlled trial comparing traditional herbal medicine and neuraminidase inhibitors in the treatment of seasonal influenza. J Infect Chemother. 2012 Aug;18(4):534-43. 

     

     

    6.まとめ

    本稿の要約【ゾフルーザの特徴】(再掲)
    ・熱が下るまでの期間は、自然治癒と比較して「1日」短くなる(タミフルとほぼ同じ)
    ・他人に感染させてしまう期間はタミフルよりも1~2日短い
    ・ゾフルーザ投与患者の成人の約1割、小児の2割以上において熱が下がるまでの期間および他人にインフルエンザを感染させる期間が長くなる
    ・錠剤で1回飲むだけ(タミフルは1日2回を5日間続ける)

    毎年、この時期になると「インフルエンザ」「インフルエンザ」で、日本人は本当にインフルエンザが好きだなと思います。

    そのインフルエンザの治療薬を日本の製薬企業(シオノギ)が開発したということで、大きく「ゾフルーザ」が取り上げられています。

    しかし、多くの患者さんに誤った知識が植え付けられてしまっており、完全に過剰広告だと考えます。

    白衣の友人の薬剤師も患者さんから色々とゾフルーザについて聞かれるとのことです。

    薬ができるのは素晴らしいことですが、子宮頸がんワクチンのように、メディアとの連携がイマイチだと誤った情報が流れてしまい、大変なことになるということですね。

    *子宮頸がんワクチンを投与すると痙攣するといった話がありましたが、あれは科学的には完全に否定されています。本件を科学的に証明した村中璃子氏は世界で最も権威のある学術誌「Nature」より「ジョン マドックス賞」を受賞されています。ちなみに日本ではほぼ報道されていません。

     

    自身の体のことですので、マスメディアを信じすぎず、自分で考えて専門家の話を聞くように行動してみてください。

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