書評・映画評

    人間力×情報収集力×情報編集力⇒AIに代替されない人材

    10年後、君に仕事はあるのか?―――未来を生きるための「雇われる力」

    近未来,AIに奪われる仕事が発表されたことは記憶に新しく、ピークを去った今でも週に一度「あなたの仕事はAIに奪われる!」「機械は貧富の差を加速させる!」などといった記事を目にします。

    上記の論文が大きな反響を読んだ背景には、ランキングの中に弁護士や癌専門医など、いわゆる高度教育を必要とする職業がランクインしていた点です。

    これまで弁護士・医師はそれぞれ文系と理系の頂点として、だれもが羨む職業の一つでありました。

    そのような非凡な知識を必要とする職業がAIによって代替されやすいという事実は、私達に衝撃を与えると同時に危機感を抱かせました。

    たとえ長年をかけて専門的な能力を磨いたとしても、それがAIやITが得意とする領域では意味が無い。

    上記の論文が示している事はそういうことです.では我々人間に残されている仕事は何でしょうか。それについてのヒントが本書には記載されています。

    それが
    「基礎的人間力」 ×「情報処理力」 ×「情報編集力」
    です。

     

    基礎的人間力および情報処理力は、察しがつくと思います。

    前者は自立心や協調性などのマインドとして優れているか,後者は与えられた課題に対して既存の解法を用いて素早く正しくアクセスでいるかという能力のことを指します.では,情報編集力とは何でしょうか?

    本書の一部をそのまま抜きとれば、
    「情報編集力は、正解がないか、正解が1つでない問題を解決する力」とのことで、すなわち答えがない世界で最適解を導く力を指します。

    「そんな力は昔から必要だったろう」と言いたい気持ちはわかりますが、この“答えがない世界”という点が1つのキーワードであると考えます。

    これまでの日本は、アメリカというロールモデルを目標にして、ただそこに向かってがんばればいいという「答えがある世界で働く」ことが常識でした。

    しかしながら、 G1からG7、G20、そしてG0と、アメリカ一強時代から国境なきボーダレスワールドへと、時代は移り変わっていきました。そして、そこにはロールモデルを示す国家はありません。

    そのような先頭に立って道筋を示してくれるリーダーがいなく、 IT・パソコン・スマートフォンが普及し情報が世界中に瞬時に伝わる複雑系の世界で最適解を導き出す力、その力こそがこれからの世界で通用する人材であると本書は述べています。

    このような「複雑系の世界で最適解を導き出す力」のことを文部科学省では「思考力・判断力・表現力」と表現し、また経済界では「問題解決力」と呼ばれたりしています。

    ちなみに教育政策のデファクト・スタンダードを追求するOECDでは以下のような表現がされています。

    「日常の知識を得る事はデジタル化・外注化されるから、むしろ自分自身の考え方、創造性、批判的思考(critical thinking)が問題解決や判断の鍵を握る。他人とのコラボレーションやチーム枠といった共同的な働き方がより重視されるようになるので、 ICTなどの社会的文化文化的ツールを使いこなして、いかに世界と関わりあえるかが重要になるだろう」

     

    なんかやたらコムズカシイことを述べていますが、結局のところ「人間力・情報収集力・情報編集力」を鍛えろ、におさまると思います。

    OECDが必須スキルと言っているくらいですから,やはりこれからのビジネスマンには身につける必要のある能力であり,一方でその能力のない人は淘汰されていくということかと思います.

     

    ではどのようにして「情報編集力」を高めていけば良いのでしょうか

    「情報編集力」というのは、コミュニケーション、ロジカルシンキング、シミュレーション、ロールプレイ、プレゼンテーションの5つのリテラシーから構成されていると述べられています.

    そして,これらのスキルを高めるためにはロールプレイで問題を解決する演習をすると良いとのことです.

    例えば「ある場所の地図を示して、クリーニング店を開きたいと思ったら、どの場所に出店すれば儲かるか?」といったテーマを投げかけ議論をするといったものです。

    自分が開店者であるという「ロールプレイ」の設定で、同様に議論している仲間と「コミュニケーション(ディベート含む)」しながら、「ロジカル」内容を組み立てて「シミュレーション」し、最終的に「プレゼンテーション」で発表してもらい,さらに「売上が高い店」の要因分析するところまで行うと良いとのことです.

    分析を行うことで、自然にKJ法のような分析法が身に付き、ロジカルシンキングができるようになるからです.

    上記の様なロールプレイを繰り返すこと情報編集力は高まり,次第に自分一の分析でもある程度のレベルまで持っていけるようになると筆者は述べています.

    情報処理能力も大事

    情報処理能力は正解がある中でいかに素早くその成果に辿り付くかの処理能力のことを指します.したがって,「情報処理能力」は言い換えると「基礎学力」とも言えます.

    情報編集力の重要性について上記で述べましたが,もちろん情報処理能力も非常に重要です.

    編集力の必要とする仕事をするためには,まず処理力で雑多な仕事を素早く片付けなくてはならないからです.

    情報編集力は情報処理能力がある一定以上のレベルまで高まっていることを前提としたうえで,求められる能力であると言えます.

    希少性を目指す.キャリアの大三角形を描こう

    鍛え上げた情報編集力で何を目指すのか.これが本書のもう一つのメインテーマです.

    一言で言うと貴重な人材になろうと言うものですが,本書が提示する貴重な存在とは普段私達がイメージするものと少々ことなります.

    私達が想像する貴重な存在とはオリンピック選手であったりノーベル賞受賞者であったりと非常に優れたスペシャリストではないでしょうか.

    もちろん,このような方々は大変素晴らしいのですが,だれでもなれるものではありません.

    そこでキャリアの大三角形を描くのです.

    サッカー選手のような単一の領域をひたすら磨き上げるのではなく,異なる三領域でそれぞれある程度の人材になり,その三領域を掛け合わせて貴重な人材になれということです.

    本書ではオリンピック選手は専門領域における100万分の1の存在である一方,三領域をかけ合わせた人は各領域で100分の1程度の専門性を掛け合わせて100万分の1になる人材であると説明しています.

    筆者は営業・マネジャー・校長という三領域でそれぞれ100分の1となり,それらをかけ合わせたことで100万分の1の珍しい人材になれたと述べています.

    専門領域外に進出することは,それ自体が勇気のいることではありますが,それ故に実るものも大きいのかと感じました.

     

    本書は高校生などの学生を対象として書かれていますが,大人が読んでも大変勉強になるため,一読の価値は十二分と思います.

    90分くらいであっさり読めますので,お時間のあるときに一度手に取られることをおすすめします.100万分の1の人材を目指して頑張りましょう.

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