薬と科学

    アル中用の薬が抗がん剤に!?

    紹介する論文は、 2017年12月6月号のNatureに掲載された、禁酒薬「ジスルフィラム(Disulfiram ;tetraethylthiuram disulfide」の抗がん作用についての研究で、タイトルはAlcohl-abuse drug disulfiram targets cancer via p97 segregase adaptor NPL4」です。

    今回初めて知ったのですがジスルフィラムの抗がん作用は最近注目されているとのことで、アルコール中毒は抑えられるし、抗がん作用にもなるしと、相当古い薬ながら最近研究が再び盛んになってきてる領域だそうです

     

    ジスルフィラムについて

     

    ジスルフィラムのメカニズムについて、詳細は他のサイトや教科書に任せますが、簡単に述べますと、エタノールがアセトアルデヒドになり、アセトアルデヒドが酢酸に対処されていく過程で、ジスルフィラムはアルデヒド脱水酵素を阻害します。

     

    アセトアルデヒドは毒性が強いため、頭痛や吐き気を引き起こします。

    従って、ジスルフィラムを投与するとアセトアルデヒドが体内に蓄積され、酔いの気持ちよさがなくなるため、アルコールの接収が控えられるようになります。

     

    ちなみにこのジスルフィラムですが、タイヤに硫黄を加える作業やゴム処理に従事する労働者が、アルコール飲料飲んだ後にひどくは悪酔いすることから発見されたという歴史があります。

     

    本論文は、かつてアルコール中毒でジスルフィラム多く投与された人と、今なおジスルフィラムの投与を続けている人のとの間で比較検討を行い、後者の方が前者よりもガンの発生率が有意に低い事から始まっており、その後詳細なメカニズムの解析で蓄積メカニズムを解明しています。

     

    抗癌作用のメカニズム

     

    詳細に述べると著作権に引っかかるため簡単に紹介します。

    in vivoでガンの移植モデルにジスルフィラムを投与する実験、 in vitro でガンの細胞株を用いての細胞死に至る経路が検討されており、「ジスルフィラムと銅イオンを結合させたCuETのターゲットの阻害により分子シャペロンp97の活性を阻害し、これによりp97-Ubfl1-NPL4経路であるタンパク質の分解経路が止まり、小胞体内でのタンパク質の分解、小胞体ストレス、ヒートショック反応などが生じて細胞死が惹起される」というメカニズムを明らかにしてます。

     

    新薬の開発が難化し、既存薬の適応拡大が積極的に研究されているなか、60年以上使用されて安全性が証明されているジスルフィラムの抗がん剤としての適応拡大は、大きな意義があると思います。

     

    むしろ、これまでこのような効果が明らかにされていなかったことが不思議な感じもしますが、それだけ疾患・医薬品・生活スタイル、というもの複雑化しており、簡単に相関関係は見つからないということの裏打ちでもあると思います。

     

    今回はジスルフィラムの研究でしたが、似たような事例、長年使われていた旧薬の適応拡大、は少なくないと思います。新薬の開発が進まない、というのは少々悲しい気もしますが、既存のものの有効性を再考する、ということも重要な案件だと思います。

     

    今後もこのようにエビデンスが証明され、新たな治療の可能性が広がっていくことが楽しみです。

     

    論文はこちらからPubMed[Alcohol-abuse drug disulfiram targets cancer via p97 segregase adaptor NPL4]

     

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